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DENALI
SKI
EXPEDITION

「今、冒険している」
初めてのデナリ遠征が写真家にもたらした
新しい感覚と目標。
〈フォトグラファー・小関信平〉

Text:Kei Ikeda
Photos:Shimpei Koseki, Akihiro Tachimoto

2023年5月。
写真家・小関信平は北アメリカ大陸の最高峰、デナリへと遠征した。

スポーツ写真の撮影からアウトドアの世界へと足を踏み入れ、現在は自身も精力的にアウトドアスポーツを楽しむようになった小関信平。

登山に始まり、トレイルランニング、マウンテンバイク、スキーなど、徐々に広がってきたその世界は、ついに北アメリカ大陸最高峰のデナリへ登山遠征をするまでに至った。

自身初となる高所登山遠征から何を得たのか、
名峰・デナリをどのように感じてきたのだろうか。

デナリ(標高6,190m)
デナリとは、かつてはマッキンリーとも呼ばれた北アメリカ大陸の最高峰。標高は6,190mと世界7大大陸の最高峰であるセブンサミッツの中では3番目の高さだが、北極圏にほど近いアラスカにあるため、気温、風、気圧など気象条件が非常に厳しい山として知られている。年間1000名ほど入山する登山者たちの登頂成功率は30%前後と低く、エベレストよりも登頂難易度が高いと言われるほどの山である。

DENALI SKI EXPEDITION PLAN

「自力で登れる」のがデナリの魅力であり、難しさ

小関たちがデナリ遠征に向かったのは、2023年の5月に遡る。

その後、4度もデナリ遠征を経験している北海道のガイド、立本明広と知り合ってから計画は具体的に転がり始めた。

デナリはパーミッションの取得に数百万円かかるヒマラヤの高峰と比べると入山料は手頃(現在は5万円ほど)な反面、ポーターがいないので自ら荷上げをしなければならないし、1ヶ月弱の高所生活全てを自分たちでまかなわなくてはならない。

この難敵を攻略するため、3人は半年ほど毎月のように集まってトレーニング合宿を組んだ。スキーやアイゼンを使った雪中歩行や、万が一クレバスに滑落してしまった際のロープワークなど、高所登山ならではの特殊なトレーニングを積み重ねながら、計画とチームワークを固めていったという。3週間と長期に渡って1つのテントで生活を共にし、命を預け合う仲間なのだから、一緒に時間を過ごしながらお互いを知っておくことがなにより大切になると考えたわけだ。

DENALI SKI EXPEDITION

写真左から、小関信平、福地孝、立本明広

DENALI SKI EXPEDITION

ソリで引きながら登る荷物の総重量は70kg近い

今回の計画では、まずタルキートナというアラスカの小さな村に入り、そこから氷河上のベースキャンプ(標高2,200m)へと小型セスナで移動する。そこからキャンプ1(標高2,400m)、キャンプ2(標高2,900m)、キャンプ3(標高3,350m)、キャンプ4(標高4.330m)と荷上げをしながらじわじわと標高を稼ぎ、最後に晴天を狙ってアタックをかける。予備日を含めて、山中に23日間滞在するプランを立てた。

パーミッションや山行計画の進行、装備の確保などをチーム全体で進める中、小関は食糧計画を担当した。

長期遠征の成否は美味しい食事にかかる部分が大きいという立本の経験則から、前半の食事は豪華な構成にし、ホットケーキなどのおやつまで用意したため、3人分の食材はかなりの量になった。
それらを料理するための燃料も相当量が必要になる。さらに、ウェアなどの装備はマイナス30〜40℃の環境を想定した厳冬期用のものが不可欠。加えて、2019年からは山中での排泄物は背負い下ろすルールになったので、トイレボックス一式も担がなければならない。

そのため、デナリではバックパックで背負える30kgほどの荷物に加え、各登山者が荷を満載にしたソリを引くのが定番のスタイルとなっている。

DENALI SKI EXPEDITION

DENALI SKI EXPEDITION CHALLENGE

日本の雪山との違いは天候判断の難しさにあり

高所経験の豊富な立本、5,000m以上の山に登ったことがあり高所にも強い体質の福地に対し、小関は今回が高所登山は初めての経験だった。出発前に低酸素室に泊まって体調の変化を測定したところ、高所の環境に順応しづらい体質であることがわかった。

キャンプ4までは体を高所に順応させながら、氷河の中、とにかく荷上げをしては下りてを繰り返す。かつて体験したことがないほど重量のある荷物。さらに歩き慣れていないスキーでの登りが体力的にはきつかったが、運良く危険なクレバスや雪崩にも遭遇しなかったと言う。

晴れている時しか行動しないため、基本的に行動時はシャツ1枚にビブを重ねただけの薄着。白夜なので日が出ている時間も長い。しかし、ひとたびホワイトアウトすると持っているウェアを全部着込むという極端なレイヤリングにも苦労させられた。非常に重たいバックパックをその都度下ろして、ウェアを脱ぎ着したり、スキーからアイゼンに切り替えたりする。何をするにも面倒に感じられたのも、酸素の薄い高所ならではの新鮮な経験だった。

テントの外が吹雪始めると、その日の行動は諦めて停滞を決め込むしかない。そこで実感したのが美味しいご飯やおやつ、そして暇つぶしになる娯楽の重要性である。

DENALI SKI EXPEDITION
DENALI SKI EXPEDITION

思いがけないトラブルで登頂を断念

キャンプ4から標高差900mのキャンプ5、キャンプ5から標高差990mの山頂までのアタックには、余裕を持って考えると3日間の晴天が続く必要がある。キャンプ4から先の稜線に出ると、ルートはいかにも山岳地帯の登りに変わり、スキーをアイゼンに履き替えていよいよ山登りは核心部を迎える。
しかし、キャンプ4へと荷上げをしてから3へと戻る道中、思いがけないトラブルが起きてしまう。

荷上げを終えてキャンプ3に戻った翌日、福地の体調が急変。なんとか、キャンプ4までは登り直したが、デナリの核心部を目の前にして登り続けることが困難になってしまった。あとからわかったことだが、血栓ができて呼吸が困難になる肺血栓という症状が出てしまったのだ。

登頂が叶わなかったのは残念だったが、その時、チームの目標が登頂から無事に下山することにシフトしていくのを体感できたのは、とても良い経験になったと言う。

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結局はデナリが最高だから

初めての高所登山経験は、小関の中に新しい感覚と課題を生み出してくれた。

具体的な目標があると、毎日のトレーニングや山登りにも張りが出る。さらに、自分1人でやっているとサボってしまいがちなことも、チームを共にする仲間がいて自分がサボったことで登頂に繋がらないかもしれないと考えると、やる気が湧いてくる。

「デナリが最高だから」とずっと立本に言われ続けたこともあり、いつかはまたデナリ登頂を果たしたいという気持ちを小関は強く持っている。

登頂を成し遂げた時に、果たしてどのような作品を残してくれるのか、今からその景色を楽しみに待ちたい。

DENALI SKI EXPEDITION

DENALI SKI EXPEDITION GEAR

デナリ遠征で活躍した
マウンテンハードウェアのギアたち

デナリで世界中のたくさんの登山者に出会った小関が気がついたのは、エクスペディションな環境に挑む冒険者たちの多くが、マウンテンハードウェアのバックパックやテントを愛用していたこと。小関も今回の遠征に向けて、いくつかマウンテンハードウェアのギアを選んだ。

そうした視点から選んだ3つのギアについて語ってもらった。

  • AMG™ Backpack〈AMGバックパック〉 *日本未発売製品

    デナリはとにかく重たい荷物を背負っての移動が多い山なので、なるべく重さを感じづらいようなバックパックやソリのキャリーシステムの構築は最重要課題です。
    〈AMGバックパック〉を選んだ理由は、とにかく生地やストラップの耐久性が高くて安心感があること。僕の場合は、そもそも普段から撮影機材が重たいし、大事な機材を入れるからにはしっかり信頼できるものが欲しい。日本の登山でも、軽さより丈夫さや使いやすさを重視してギアを選んでいます。
    使ってみて初めてわかったのですが、ソリを引く時にちょうど良い腰の位置にカラビナを付けられる丈夫なループがあって、それがすごく重宝しました。いろいろな箇所に付けてみたけど、ここが一番理に適っている。きっとこうしたエクスペディションな用途も想定してデザインされているのだと思います。選ぶサイズ次第では、日本国内の雪山登山やバックカントリーツアーにもおすすめです。

  • Phantom™ Gore-Tex® -40F/-40C Reg〈ファントムゴアテックス -40F/-40C Reg〉

    高所登山では、暖かいシュラフは絶対的な存在でした。ウェアをたくさん着込んで暖かくするというより、寒い時はすぐにシュラフに潜り込むようなイメージです。
    その点、〈ファントムゴアテックス〉は、たっぷりとした立体構造でゆったりと寝られ、マイナス30℃の環境下でもちょっと暑いと感じるくらい十分な保温性を発揮してくれました。3人でテントで過ごしていると、結露でじわじわと道具が濡れてしまう環境なので、シュラフのシェル自体がGORE-TEX®の耐水性・撥水性に優れた素材なのがすごく効いていた。撥水ダウンが使われているのも保険的な安心感がありました。
    寝てみて感じるのは、顔周りの暖かさですね。首周りには温まった空気を逃さないたっぷりとしたドラフトチューブがあり、高い密閉性を感じられました。ジッパーの開閉は寒い中でもひっかかりがなく、とてもスムーズ。寒さや扱いにストレスがないのは、シビアな環境下では大きなメリットになると思います。詳細をみる

  • Expedition™ Duffel〈エクスペディションダッフル〉 *使用サイズは120ℓ *日本未発売製品

    空気が薄いところで生活していると、不思議と普段よりやることなすことが雑になってきます。そんな時は、開口部が大きく開けるダッフルバッグの出番。荷物を運ぶ役割以外に、テント内ではパーソナルスペースしてポンポン荷物を放り込んでおけるので重宝しました。
    〈エクスペディションダッフル〉は、防水生地が非常に丈夫で、センタージッパーでガバーって開ける構造が特に使いやすい。開いたら外側に折り返す線があって、形がしっかり立つのも良いところです。日本国内の登山やスキー、旅行にも使い勝手が良さそうです。