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Interview

#01INTERVIEW(1/3) テレマークスキーとの出合い

「スキーがタテ乗り、スノーボードがヨコ乗りならば、テレマークスキーはナナメ乗り。
テレマークスキーこそフリースタイルな道具だと思います」

テレマークスキーに初めて出合ったのは、野沢温泉で開かれた国際大会、1996年のインタースキーでした。まだ小学生だった僕は、北欧チームのデモンストレーションを見て、「カカトが上がってる?!」と驚いたのを覚えています。

僕が始めるようになった直接のきっかけは、アルペンレーサーの佐々木明さんが野沢温泉に遊びにきた時に、テレマークスキーを履いていたことです。これがテレマークスキーなんだって初めて知ったのがその時で、アキラさんの滑りを間近で見て、ちょっとおもしろそうだなと思ったんです。高校1年の頃ですね。

タイミングがいいことに、その頃、実家のレストランで働くスタッフの一人がテレマークの道具一式を持っていたんです。足のサイズもちょうど同じで、「これテレマークじゃん、貸してくれませんか?」って借りて履いたのが最初です。新鮮でしたね。何がおもしろいって、アルペンスキーでガンガン飛ばしていた緩斜面が、ものすごい急斜面に思えたんです。同じスキーなのに、カカトが浮くだけで、こうも違うものなのかと。その難しさにどっぷりハマッていった感じはありますね。

上には兄が二人いて、僕が高校の頃にはフリースタイルスキーヤーとしてメディアにも取り上げられていました。長男の正之とは7歳、次男の雄大とは4つ違います。また、従兄弟には同世代の河野克幸、健児、直人の三兄弟がいます。みんなアルペンレース出身で、その頃出始めていたスキーボードやツインチップスキーを履いてパークを滑ったり、ジャンプをしたりしていました。でも、高校生の僕はその頃、本格的にアルペンレースに取り組んでいて、成績も出始めていた頃だったからフリースタイルには行かなかった。

三男坊にはどこか負けず嫌いなところがあると思うんですよね。二人の兄貴は尊敬していたし、彼らのフリースタイルなライディングを見てカッコいいな、すごいなって思ってました。でも歳も離れていたし、どこか手の届かない存在。たぶん心のどこかで、同じことを始めても兄貴たちには勝てない、という思いもありました。ならば、自分は彼らと違うことをやって、それで兄貴たちに認められたい。そんな願望が少なからずありました。そんなときにテレマークスキーと出合ったんです。

テレマークの滑り方に関しては誰からも教わったことがなく、とにかく1本転ばずに滑りきること頭に入れて、自分の中で試行錯誤を繰り返した。それで徐々に徐々に、滑れるようになっていきました。それはアルペンレースで技術を身につけていく時のプロセスと同じでした。ある時は、雑誌の写真を見てターン姿勢を真似てみたり、自分なりのイメージを描いて、何度も試行錯誤を繰り返す。そうして徐々に滑れるようになっていきました。

大学でレースの成績が落ち始めた頃からは、次第にテレマークに移行し始め、大学3年の時にはもう、野沢にいるときはほとんどテレマークを履いていましたね。大学を卒業してアルペンレースを止めてからは、完全にテレマークスキーにスイッチしました。冬になって野沢で滑る時も、周りにはフリースタイルスキーヤーしかいなくて、彼らと一緒に滑ることで、自然と自分なりのライディングを作り上げていったのだと思います。

最初は1本付いて行くのに一杯いっぱいでしたよ。1本滑るごとに何度も転んで、脚もパンパンになりながら、それでも同じスピードで付いていってジャンプしたり、壁に当て込んだり、パウダーを滑ったり……。その当時はテレマークでパウダーなんてぜんぜん滑れなかったんですけど、でもとにかく付いていく中で、自分なりに疲れない滑り方や体のポジションを見つけていった。それこそ子どもの頃に先輩たちの背中を必死で追いかけたのと同じように、かなりスパルタな独学でしたね(笑)。

テレマークスキーは、型にはまらないライディングスタイルが最大の魅力だと思います。アルペンレーサーのようにがっちりとアンギュレーション姿勢を固めてカービングしてもいいし、上体を大きく振り込んでサーフィンのようにターンしてもいい。アルペンスキーよりも不安定で、スピードにも弱いけれど、アルペンではできないような動きがテレマークにはできる。むしろ、ツインチップスキーよりもフリースタイルだと思うんですよ。

アルペンスキーがタテ乗りで、スノーボードがヨコ乗りなら、テレマークスキーはナナメ乗り。両方のいいとこ取りだと思うんです。スノーボードの動きは常に意識しますし、両カカトを上げてみたり、スイッチで滑ってみたり。こんな動きはできないかなとイメージを膨らませながら滑るようになって、ライディングの幅が一気に広がりました。「テレマークスキーって、そんな動きができるんだ?!」って言ってもらえる時が一番嬉しいですね。それは最高のほめ言葉です。

これからテレマークスキーを始める人にひと言アドバイスするなら、答えはないってこと。別にカカトを上げなくてもいいですし、脚を開く幅も人ぞれぞれでいい。滑り方に正解はないんです。テレマークの道具を使って、その人なりのスタイルで、自由に楽しく滑ること。それがテレマークスキーなのだと思います。

 

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PROFILE

上野岳光

上野岳光

うえのたけみつ◎1985年、野沢温泉村生まれ。物心つく前からスキーを履き、小学3年生からは野沢温泉ジュニアスキークラブに所属してアルペンスキー競技を始める。中学時代に全国大会に進み、飯山南高校3年時にはインターハイと国体で2位、高校選抜優勝。日本大学文理学部体育学科に進み、全日本ナショナルチームを経て、卒業後はテレマークスキーヤーに転進。現在、地元に戻り、野沢温泉で活動を続けている。

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