LINES

facebook MountainHardWear

#05 STORY

MOUNTAIN LIFE.

Shikaichi Ueki Whistler, BC, Canada

SCROLL

WHISTLER LIFE

冬のバカンスを楽しみにやってきた裕福な夫妻や家族連れに混じって、バックパックを背負って太いスキーを担いだローカルが先を急いでいる。麓のウィスラービレッジで毎朝のように目にする光景だ。そのなかに植木鹿一の姿があった。
標高差1000mものロングランを楽しめるリゾートスキー場の上部に、ハードバーンを連ねたアルパインエリアが広がる。それがウィスラーとブラッコムという2つの山に展開されているとあって、ここには世界中から屈強な滑り手たちが集まってくる。50度近い急斜面や、岩に挟まれた狭いシュート、高さ10mを超えるクリフなど、彼らの挑戦心をかき立てるラインは豊富で、スキームービーで観るようなアグレッシブなシーンが日常的に展開されている。日本ではあり得ないこのフリーダムなスキー環境に惹かれて、植木はこの地に移り住んできたのだ。
「驚くような急斜面にラインが入っていたり、信じられない高さのクリフに飛んだ跡があったりと、それを見るだけでもモチベーショ ンが上がります」と植木。最初はコースのあまりのハードさに体が付いていかず、翌日から1週間は全身筋肉痛で滑ることができなかったこともあるという。それからはひたすら毎日滑り込むことで力強いスキーを身に付けた植木は、ほどなく北米各地のビッグマウンテン大会にも参戦するようになり、勇気ある選手に贈られるSICK BIRD賞にも輝いている。そんな植木のウィスラーライフも6年目を迎えている。スキー場の麓に住み続けていれば、それなりにスキー欲は満たされるもの。だが、植木は今でも毎日のようにスキーを履いて、ハードなラインを攻め続けている。たとえ体が疲れていても、休むよりは滑っていたいと考える。そんな彼の意欲を支えているのは、「とにかく上手くなりたい。上手くなるには滑るしかない」という一心。フリーライドの世界基準を日々目の当たりにしているからこそ、世界との差を詰めたいという欲求は募るばかりなのだ。

フリースキーヤーにとって恵まれた環境といえるウィスラーだが、実際にそこで暮らすには楽ではない。北米有数のリゾート地だけに物価は高く、安く借りられる家もない。多くのローカルたちがそうであるように、植木もまた滑り仲間と一軒の家をシェアして住みながら、限られた収入をやりくりしながら生活している。ワーキングホリデーを利用してウィスラーに来た当初の植木は、誰もが経験する「Three Job」、つまり1日に3つのアルバイトを掛け持ちしてなんとか食いつないだという。昼間はレストランの清掃とホテルのハウスキーピング、夜は飲食店の下働き。朝から夜まで働きづめで、夏のウィスラーを楽しむ余裕もなかったという。冬になってもスキーから上がった後は、夕方から夜11時までレストランでの仕事を続ける毎日だった。
その後、日本食レストランで働いてワーキングビザをサポートしてもらい、現在は、夏に大工として働いて資金を稼ぎ、冬はスキーに集中できるようになっている。夏季のウィスラーは日が長く、夜は22時頃までは明るいため、週に1、2回は仕事を終えてからフィールドに出ている。マウンテンバイク、トレイルランニング、そしてクライミングが今のルーティン。ウィスラーに住み続ける植木の暮らしは、憧れのリゾートライフとはほど遠いもの。けれども、フリースキーヤーとして築き上げた、充実のマウンテンライフであることには違いない。

123

カスタマーサービス
マウンテンハードウェアについて
メールマガジン購読